チェロ弾きの上司。
「今日のシェヘラザード、オレのことだけ見てろ。惚れさせてやるから」
な、
なんてオレ様発言なんだ……!
「無理です!」
「何で即答なんだよ。理由言ってみ」
「あたしみたいなのが真木さんのようなハイスペックの方とお付き合いするなんて、無理です!」
「却下。理由になってない」
ひえぇ!
「上司と部下が付き合うのはいかがなものかと!」
「別に社内恋愛禁止じゃないだろ。もちろん仕事に私情は挟まないが」
「演奏中に真木さんだけ見てるとか、ありえませんから! 指揮者もコンマスも見なきゃいけないので、無理です!」
「指揮者の目の前でコンマスの隣なんだから、見なくてもブレスと雰囲気で察せるだろ」
そんなバカな!
「決めた。目を離せなくさせてやる」
「やめてください! 演奏妨害です!」
真木さんは楽しそうに笑って、歩き出した。
「ほら、そろそろ行くぞ。三神に怒られる。返事は終わった後にきくから」