チェロ弾きの上司。
チェロ弾きの上司との春〜IV〜
「シェヘラザードの三神さんのソロ、すごかったですね!」
「色っぽくてドキドキしましたー!」
「いやあれはもう、エロいと言った方がいいと思う」
「ラストの上昇音型、天国へ行きそうだったわ……」
「あんたのそれ、卑猥!」
はい。打ち上げの席です。
弦楽器女子グループ、演奏会終了後のテンションの上に、お酒が入ってるので、話が際どくなってきてる……。
「だって、あれはもう、王様とシェヘラザードの交わりにしか聞こえなかった」
「何エッチなこと想像してんのよ!」
「想像は自由だもんね〜」
「あたしは真木さんのソロにびっくりしたなぁ」
「練習の時と違って、色っぽさ前面に出してきてたよね」
ドキ。
いや。別にあたしがドキドキすることではない。うん。
その真木さんは……。
三神さんと、木管女子テーブルで楽しそうにしてる。
木管女子、みなさん女子力が高くていらっしゃる。
そうだよね、真木さんに釣り合うのは素敵女子だよね……。
……胸がちくちくする。
あたしは慌てて目をそらす。
はぁ……。
好きって気持ちは厄介だなぁ……。
困ったことになった……。
あたしはグレープフルーツサワーをごくごく飲んだ。