チェロ弾きの上司。
「それには及ばない」

後ろから氷のようなお声が降ってきた。

「こいつがご迷惑をおかけしたようで」

はいっ⁉︎
いやいや、何だかすでにその、こいつはオレのだ的な発言はいかがなものですか⁉︎
と思いながら振り返ると、やはり。
不機嫌オーラをバシバシ撒き散らしてる真木さんが腕組みをして立ってた。

「あ、そーゆーことっすか。出る幕ない的な? 失礼しましたー」

そそくさと去っていく稲森君。

あたしも後に続こうかな、なんて……。

「おい」
「はいっ」
直立不動になってしまうのは、もう部下としての条件反射だよね。

「どういうつもりだ? 逃げまくりやがって」

はは。気づかれてた。

「前回の定演を思い出すな。オレに気づかれまいと、こそこそしてたお前を」

これまた懐かしいお話を。
あれから半年。
まさかこんな展開になるとは思っておりませんで……。

「しかもあんな若造にへらへらしてるし。飲み過ぎだ。この後酒禁止。ノンアルにしろ」

やっぱりオレ様……。

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