チェロ弾きの上司。
駅に着いた。
「ここで結構です」
「家まで送る」
アパート敷地の入口に着いた。
「ここで結構です」
「部屋まで送る」
って、漫才か!
で、あたしの部屋の前。
「まだ忘れてることあるだろ」
「えっと、あの……」
いっそ忘れたい。
「返事、きかせてもらおうじゃないか。送ってやったんだ。コーヒーくらい飲ませろ」
出た、オレ様。
騒ぐと近所迷惑なので、仕方なく部屋の中へと招き入れる。
真木さんが後ろでご丁寧に鍵をかけてくれたけど、ガチャリ、という音が、自分の家だというのに閉じ込められた感満載なのはどうしてだろう……。