チェロ弾きの上司。
少し上から見下ろす形になる。

真木さんの肩にそっと手を置く。

わあ。大きい。見た目よりがっしりしてるんだ……。
そりゃそうか、男の人だし、弦楽器って、筋肉使うものね。

やばい。触れてると、ドキドキしてくる。

真木さんは嬉しそうにニヤっと笑いながらあたしを見上げてる。

……もう。
真木さんにはかないません……。

形の美しい唇を見つめながら、そっとかがんで、顔を近づけた。



唇が、
重なる。


うわぁ。
柔らかくて、
気持ちいい……。

このあたしが、真木さんとキスしてるとか、不思議……。
人生、生きてればいいこともあるもんだなぁ……。


ゆっくりと唇を離し、目を開ける。

わ。
真木さんがほんとに嬉しそうに笑ってる。

「気持ちいいから、もう一回」

はにかんでそんなふうに言われたら。

「もう。一回だけですよ」

なんて言いつつ、あたしもしたいと思っちゃうじゃない。


ーーー好き。


好き、の気持ちを込めて、さっきよりしっかりと、唇を重ねた。

……あぁ、かなり幸せかも。

早瀬さんが、新しい世界に飛び込むのは怖くないって言ってたけど、確かに飛び込んでよかったな、って思う。
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