チェロ弾きの上司。
困ったように、優しく、笑ってくれてる……。

その笑顔を見て、
この人が好きで、
この人としたい、
と思ってしまって。

「あの、今度の週末なら……」

と言った……途端!
真木さんの顔がニヤっとした!

うそ! どっからどこまでが演技⁉︎

「いえ、嘘です、あの、やっぱり」

「よし、今度の土日オレんち来い」

「いえ、さっきのは真木さんにほだされて、つい口走ってしまっただけで」

「もう決めたから」

これだからオレ様は!

その時、真木さんの携帯が鳴った。

「……三神?」

つぶやき、「何だよ」と電話に出る真木さん。

「……は? うっさいな。用件何だよ」

あたしはテーブルに置いていたお茶を飲む。
ぬるくなってるけど、一連の緊張と興奮で喉が渇いていたので、ありがたい……。
ごくごく一気飲みしてしまった。

「彼女できた? そりゃよかったな」

えっ、何何?
三神さんに彼女できたの?
例の片想いしてた人かな?

「明日の夜? いいけど。ああ。大丈夫だろ。……何だよ、……はいはい」

こっちを見る真木さん。

「明日の夜メシ行くぞ」

あたしがうなづくと、真木さんはまた電話に向かって話し始める。

「は? だからうっさいっつーのに。……ああ。わかった。はいはい」

電話を切った真木さんがあたしを見る。

「三神が彼女紹介してくれるだと。見せびらかしたいだけだろうが、あのバカ」

……そう言いつつ、嬉しそうですよ、真木さん。


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