チェロ弾きの上司。

ごはんを食べて、デザートを食べながらおしゃべりをして、お風呂に入って(もちろん別々!)。

真木さんは一度もあたしに触れない。
なのに、
そういうことをしたい、って考えてるのが雰囲気で伝わってきて。

あたしはずっとドキドキしてた。

「そろそろ、寝るか」
真木さんがさりげなく言った。

「先にベッド行ってて」

あたしはうなづき、寝室へ向かう。

ベッドの縁に腰掛けた。

緊張する。
上手くいかなかったらどうしよう。
真木さんのことがっかりさせちゃったらどうしよう。

少しして真木さんが寝室に入ってきて、
電気を消し、
ベッドにのぼり、
枕元のライトをつけて、
あたしを後ろから抱き締めた。

あまりに幸せで、胸がぎゅーっとなった。

「どうした? 緊張してるか?」

あたしはうなづいた。
だって。
……ちゃんと言っておいたほうがいいよね。

「あの、真木さん……」

「名前」

「響也さん……」
は、は、恥ずかしい!
「あの、あたし、その……」

「ん? どした? 言ってみ?」

「初めてなんです……」

響也さんが、固まったのがわかった。


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