チェロ弾きの上司。
どうしよう。おかしいよね。面倒だよね。

「付き合った奴はいたって言ってたから、てっきり……」
「その、最後まで、できなくて……。それがきっかけでだめになっちゃったから、今度も、響也さんのことがっかりさせ…」
「言わなくていい。悪かった、さっきの失言。女に言わせることじゃなかった」

響也さんはあたしの頭を撫でてくれた。

「優しくする。約束する。オレでいい?」

あたしはうなづいた。

「響也さんがいいです」

「ありがと……」

あたしの髪に、耳に、うなじに、キスが落とされていく。

ちゅっ……というリップ音がするたび、あたしの身体から力が抜け、響也さんに身を預ける格好になる。

「みや、こっち向いて」

響也さんの声に顔を向けると、唇がそっと重ねられた。

あー、気持ちいい……。

食むように唇が何度も重ねられたのち、舌がそっと入ってきた。

あたしは、好き、の気持ちをこめて、おそるおそる、それに応える。

響也さんの腕があたしをぎゅっと抱き締め、キスが深くなった。

夢中でそれに応えた後、唇が離れると、響也さんが「上手」とはにかんで言ってくれた。

うわぁ。うれしい。お世辞かもしれないけど、うれしい。
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