チェロ弾きの上司。
「シーツなんざ後でクリーニングに出せばいい。気にするな」

「クリーニングだなんて、もったいないです……。あたしが明日洗濯します……」

「じゃ、心おきなく汚せるな」

響也さんは笑いながら、Tシャツを脱いだ。

うわぁ。裸……。
筋肉がついて、引き締まっていて……。

あ、胸に、痣。

チェロが触れるところに痣ができるときいたことはあるけど、ほんとなんだ……。

響也さんがあたしの身体の両脇に手をつき、あたしを上から見下ろし、微笑んだ。

「気になるなら、触ってみるか?」

あたしはおそるおそる手を伸ばして、痣に触れた。
少しザラザラしていて。
あたしの首の痣と同じ感触。

「お返し」

響也さんは笑って、あたしの上に乗ってきて、あたしの首の痣と、鎖骨の痣に口づけた。

そして、正面の至近距離から、あたしを見つめる。

綺麗な顔。綺麗な瞳。
でも。
まぎれもなく、男の人の、欲情してる顔だ。

あたしにそんな顔見せてくれることさえ、うれしい。

……だけど今はそれよりも。

「どした?」

「素肌があまりにも気持ちよくて、びっくりしてます……」

響也さんは笑った。
< 193 / 230 >

この作品をシェア

pagetop