チェロ弾きの上司。
派手にされたらどうしようってドキドキしてたけど、綾乃さんはあたしの“派手なのは苦手”って言葉をくんでくれて、絶妙のバランスで、派手じゃないのにお化粧してる感がある仕上がりにしてくれた。

大変身じゃない、プチ変身。

すごーい! こうなってみたかったの!

しかも、あたしにメイクしながら、あたしが自分でもできるように、ひとつひとつ説明してくれて。
失敗した時のリカバリ方法まで教えてくれて。

さすが三神さんの彼女! できる!

「よくお似合いですよ。彼氏がもし変なこと言っても、照れてるだけですからね」

思わず響也さんの反応を想像してしまう。びっくりするかなぁ。

三神さんの話をすると、綾乃さんは切なそうな顔をした。
嫌いとか、怒ってる風じゃない。
好き合ってるのに、すれ違うこと、あるんだな……。

「あ、お仕事中に関係ない話してすみません! これ、全部ください!」
「え? 別にいいんですよ。よく考えて、また次にいらした時にでも……」
「いーえ! あたし、どうせ買うなら橘さんから買いたいんです!」

綾乃さんは気が利くことに、落とす時のことまで考えてくれた。できる!

メイクグッズ一式に加え、ポイントメイクアップリムーバーとクレンジング剤を購入。

お二人が早く仲直りできるといいなぁ、と思いながら、スーパーに寄って、響也さんの家に向かった。


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