チェロ弾きの上司。

演奏会終了後、帰り支度をしてロビーに出ると。

「あらっ、雅ちゃん!」

声がした方を見ると、ヴァイオリン教室の先生、華子先生が走り寄ってきてる!
聴きにいらしてたんだ!

「華子先生!」

「まー、大きくなって!」

ぎゅうっと抱き締められる。

華子先生はあたしから身体を離すと、まじまじとあたしを見た。

「……雅ちゃん。色っぽくなって、先生は感無量です」

「華子先生、あたし、あの時メンコンに挑戦してよかったです。先生のおっしゃった意味がわかりました。ありがとうございました」

華子先生はまたあたしをぎゅうっと抱きしめた。

「教師冥利につきるわ」


その時、響也さんが声をかけてきた。

「雅、外で待ってる」

すると、パッとあたしから身体を話した華子先生が叫んだ。

「あらまっ、真木響也くん!」

「……こんにちは。お久しぶりです。覚えてたんですか」

「こんないい男、忘れるもんですか! 中学生の頃からかっこよかったけど、大人になって、ますますかっこよくなったわねー! なになに、雅ちゃんの彼氏が真木くんなの⁉︎ いや〜ん、世界は狭いわ!」

「あの、ひとつ伺っても?」
響也さんが華子先生に向かって言った。

「なぁに?」

「あなたの生徒は、三神にしても、こいつにしても、身体のコントロールが上手いし、気を許した相手には思ったことをほいほい口に出しますが、教育方針ですか?」

「もちろんよ! ヴァイオリニストの前に、人間ですからね! ヴァイオリンやめても役に立つことを残してあげたい、っていうのが基本方針です!」



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