チェロ弾きの上司。
打ち上げ前に荷物を響也さんのマンションに置きに行くために、ペデストリアンデッキを歩く。
以前、カルテットの前に響也さんと散歩した道。
夕陽が、あたし達を照らしてる。
「なぁ、雅」
少し先を歩く響也さんが、視線を前に向けたまま、話しかけてきた。
「はい?」
「その、雅の身体のことなんだけどさ……」
「はい」
「毎月のやつ……」
「ああ。今度の土日は申し訳ないんですけど、来ちゃいそうですね。でも、響也さんとそういうことするようになってから、よくなってきてますよ?」
子宮がよろこんでるせいか、
ホルモンバランスのせいか、
あたしが女であることを受け入れたせいか、
どれのおかげかはわからない。
あるいは全部が関係してるのかもしれないけど、寝込むようなことはなくなった。
そういえば響也さんは、付き合い始めた頃、周期やホルモンバランスのことを勉強してくれた。
わかろうとしてくれることが、すごくうれしかったな。
「それさ、子ども産んだら、軽くなること、あるんだって?」
「そうみたいですね」
「じゃあ、オレとの子ども、産めよ」
軽く言われたけど。
意味を考えて。
……あまりに驚いたので、立ち止まってしまった。