チェロ弾きの上司。
「響也さん? 言って?」

「……口で、して……」

恥ずかしすぎるだろ!

「ふふ。あたしが欲しい言葉をくれたら、してあげる」

この女! 覚えてろよ!

オレはなけなしのプライドを振り絞り、言った。

「耳、貸せ」

彼女がオレの口元に耳を寄せてくる。
オレは、小さな頭が逃げないようにがっしり押さえこんで。


ーーー「雅……愛してる」


これでもかというくらい、甘くささやいてやった。
さすがに彼女は頬を赤らめた。
よし。一矢報いた。

「あたしもです。響也さん」

彼女は、唇に軽くちゅっとしてから、オレがしてほしかったことをしてくれた。




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