チェロ弾きの上司。

全体練習終了後。

「佐藤さん、小野寺さん、山口さん、弾けてるので解散で結構です」

三神さんがヴァイオリンパートに向かって言う。

「望月さん」

はいっ!

「川崎さん、中村さん、稲森さん、関口さん、基礎はできてるので、あと3週間で弾けるように頑張ってください」

ハイっ! がんばります!

残りのメンバーは、習熟度別に2つに分けられ、永野さん(セカンドヴァイオリントップ。クールビューティな30代女性。彼女もとても素敵にヴァイオリンを弾く)と、三神さんがそれぞれ教えている。

ヴィオラは弾ける人が弾けない人を教えてる。

チェロは、みんなで輪になってる。
……真木さんが手拍子で拍打ちしてる……。
弾けてるってことなんだろう。


よしよし。気づかれないうちに帰ろう。

「モッチー、ごはん行こー」
楽器を片付けて帰ろうとすると、解散したヴィオラのアカリンがそっと声をかけてきてくれた。
小川灯里(おがわ あかり)。通称アカリン。
同い年で、気が合う。
< 30 / 230 >

この作品をシェア

pagetop