チェロ弾きの上司。
チェロ弾きの上司との秋〜II〜
月末から月初にかけて、あたしが忙しいとわかってくれてるようで、真木さんは仕事を振ってこない。
仕事は忙しいものの、精神的には穏やかな日々。
なーんだ、こんなことなら、早くカミングアウトしてればよかったかな……。
と思いつつあったんだけど。
月締めが完了した旨、社長に報告した途端。
「望月、この間頼んでおいたリスト、出来てるか」
真木さんがきいてきた。
えっと。
だってそれ、すっごく面倒なんですもん。
珍しく時間がある時でいいって言われたから、手つけてないです。
なんて言えない……。
うーむ。ここは開き直るしかあるまい。
「申し訳ありません、忘れてました」
「ほーお」
低い声。
やばい。誤魔化し方、間違えたらしい。
「シンフォニー暗譜できる奴が、わ・す・れ・た、と」
げげげ。
そういう嫌味言うんだ!
「い、いつまでにお渡しすればよろしいでしょうか……?」
「今日中と言いたいところだが、明日まで待ってやるよ、モッチー」
うわぁ! 嫌だ! こんなサディスティックな上司!
やっぱりばれたくなかった!