チェロ弾きの上司。
周りの音が消えて。
駅前のイルミネーションの光に縁取られた彼だけが浮き上がって見えて。
「オレは、『展覧会の絵』の方が衝撃的だった」
真木さんの声に我に帰り、慌てて目をそらした。
あれれ? あたし今、ぼーっとしてた?
息するの忘れてたせいか、ドキドキするし。
「望月こそ、酔っ払ってるだろ」
はいっ⁉︎
「今日はオレの前でよくしゃべる」
……。
確かに。
今気づいた。
アルコールっておそろしい。
何て返せばよいのか。
悩んでいるうちに駅に着き、ほっとした。
あたしと真木さんはここからお互い反対方向の電車に乗る。
あたしは頭を下げた。
「お疲れ様でした。よいお年を」
「目を見て言ってみ?」
また、この人は!
「望月」
はいはいっ!
あたしは仕方なく、顔を上げた。