チェロ弾きの上司。
「あたしの知り合いに小さい頃からバイオリンやってた子がいるんですけど、普通のサラリーマンの家の子ですよ。小さい楽器は中古で安くていいものありますし、最初にどーんとピアノ買うのと変わらないって言ってました。それに、ピアノと違って場所とらないですし。将来はオーケストラでだって弾くことできますし。だから、よかったら、娘さんにバイオリン習わせてあげてほしいなって……」
びっくりした顔でこちらを見る佐倉さん。
あ。
しまった。
つい熱く語ってしまった。
はい、自分のことです。
「すみません、出過ぎたことを……」
「ううん。違うの。いっぱいしゃべってくれて、ちょっと驚いただけ」
佐倉さんは少し笑って言った。
はい。あたし、いつもはあまり喋らないですもんね。
「そっかー。ありがと。考えてみるね」
はい、ぜひ!
先にトイレを出る。
よし、頑張った!
ヴァイオリン仲間、増えるといいな。