チェロ弾きの上司。


新年一回目のオケ練習の後。

楽器を片付けていると、三神さんがやってきた。

「望月さんは、来月のアンサンブルコンサート、出る予定ある?」

毎年2月に、オケのメンバー有志が室内楽などを発表するコンサートがある。
入場無料のゆるいコンサートだ。
弦や管楽器それぞれでアンサンブルしたり、上手い人同士で小曲を弾いたりする。

「出る予定はありませんが……」

三神さんはほっとしたように笑う。

「良かった。じゃあ、僕たちとカルテットやらない?」

はいっ⁉︎

カルテットって、弦楽四重奏ですよね? ファーストヴァイオリンと、セカンドヴァイオリンと、ヴィオラと、チェロの4人でやる、あれですよね?

無理に決まってるじゃないですか!

入場無料で、そこそこお客様は入る。
しかもホールだ。
ホールに自分の音が響きわたるとか、恐ろしすぎる。

さらに、三神さん、さっき、“僕たち”とおっしゃった。

……チェロは真木さんに違いない。

だって三神さん、今までカルテット組んだことないもの。
弦楽合奏でコンマスやるか、木管や金管の上手い人とアンサンブルやるかだった。

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