チェロ弾きの上司。
「だから、度胸つける意味でも、カルテットやろう? ちなみにチェロは真木なんだけど」

ほら来た。

「カルテット、楽しいよ?」

噂ではききます。
が、“楽しい”と真木さんはあたしの中で結びつきません。

「曲はね、チャイコの1番の4楽章を考えてるんだけど」

きゃあ! 好き好き!
三神さんの演奏で、あのメロディを聴けるなんて!

……いやいや。客席でゆったり聴けばいいんだわ。

三神さんは腕時計を見た。

「そろそろ撤収時間だね。じゃあ、これ楽譜。ボウイング書き込んであるから」

三神さんは笑顔であたしに楽譜を差し出す。
思わず受け取ってしまった。

……って、えええ⁉︎


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