チェロ弾きの上司。

「アカリン、すごかったよ」

三神さんの家までは、あたしの車にアカリンを乗せて、2人で来た。
帰りの車の中で、あたしが素直にアカリンに感心したことを言うと。

「うふふ。チャイコ大好きだもーん」

だそうで。

「好きって気持ちはね、すごいエネルギーを生み出すのよ! 不可能を可能にするくらいのね!」

あ、あつい。

「とはいえ、楽器の能力はいかんともしがたいけどねー。三神さんのも真木さんのも、あれすっごい高いよね」

三神さんが高い楽器使ってるのは知ってる。
購入当時、ヴァイオリン教室で話題になってたもの。

チェロは……よくわからないなぁ。
安くはないんだろうけど。
腕がいいから、いい音がしてるのかもしれないし。


「あたしの楽器は値段の割によく鳴るって言われるけどさ、所詮は値段の割に、であって、ほんとにいい楽器とは比べ物にならないんだなーって、今日しみじみ思った。ホールでどう響くのかなぁ」

そんなこと考えてたんだ。
セレブ男子と一般女子の格差、ここにもあり。

「ま、くさらずに腕を磨くしかないよね。あと1カ月、死ぬ気で頑張るよ!」

こういうアカリンの前向きなところ、すごい!
あたしも頑張ろ!


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