チェロ弾きの上司。
チェロ弾きの上司との冬〜III〜
2月下旬の土曜日。
あっという間にカルテット本番の日がやってきた。
ラッキーなことに体調はいい。

ところが。
リハーサル。

舞台に出た途端、広くて、足がすくんだ。
いつもはぎゅうぎゅうの椅子が、4つしかない!
怖い。
緊張して吐き気がしてきた……。

でもって、何、このギャラリーの多さ。

オケのメンバーで今回出演しない人はスタッフになってるから、その人たちと。
さらには、他の出演団体のメンバーでさえ、客席にやってきている。

……気持ちはわかる。
あたしも彼らの立場だったらそうしてたと思う。

だって、三神さんと真木さんの演奏が聴けるんだもの!
純粋に、聴きたい。

一方で、“何で一緒に弾くのがあの人なわけ?”という視線を痛いほど感じる。
特に女性から……。

アウェイ感、半端ない……。


指が震える。右手も左手も。

1人で弾くのって、こんなに怖いの⁉︎

改めて、管楽器の皆様を尊敬する。

ちゃんとしなきゃ。
誘ってくれた三神さんの顔に泥を塗るような真似だけはできない。

そう思うほど、身体はコントロールを失い。

……いつもの半分も弾けなかった……。

どうしようどうしようどうしよう。


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