チェロ弾きの上司。

歩いたおかげで身体がポカポカしてきて、沈んでいた気持ちも、少し浮き上がってきた。

「うげ、あと20分もあるじゃねーか」
高級そうな腕時計を見て、真木さんが顔をしかめた。

「じゃあ、しりとりでもしましょうか?」
「あ?」
「暇つぶしの定番です。発表会で思い出しましたが、発表会の控え室でみんなでやってたんです。しかも音楽ネタ限定しりとり。
いきますよ。しりとりの“り”。はい、真木さん」
「リムスキーコルサコフ」
わ。真木さんがのってくれた。意外。
「ふ……? フルトヴェングラー」
「ラフマニノフ」
「また“ふ”、ですか⁉︎ フランク」
「クレーメル」
「ル……、ル……? ルバート!」
「トスカニーニ」
真木さん、早っ!


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