チェロ弾きの上司。

ステージ終了後、練習室に戻り、楽器を置いて、アカリンと抱き合う。

「アカリンすごかったよー!」
「ありがとねー」

三神さんと握手。
「ありがとうございました! すごく勉強になりました」
と言うと、
「ね、楽しかったでしょ?」
と優しく笑ってくれた。

そして、……真木さんと……

って、楽器片付けてるし!

「真木、ちゃんと挨拶しなよ」

真木さんは面倒くさそうに、手を止めずに言った。

「はいはい。頑張ったんじゃん? お疲れ」

……褒められた?

「バカ。ちゃんとだよ」

三神さんに言われ、真木さんはあたしに手を差し出した。

「上出来」

あたしはその手を、おずおずと握る。

あったかくて、大きくて。
顔を見ると、照れたように少しだけ笑ってくれて。

途端。
涙がポロポロ溢れてきた。

あれ。あれれ。何だ何だ。止まんない。

慌てて手を引っ込め、顔を覆う。

それでも、ちゃんと言わなきゃ。

「ありがとう、ございました……」

「おい、お前……」

「ちょっと真木、何泣かせてんの!」

「オレかよ! 何もしてないだろ!」

「もー、モッチーは泣き虫さんなんだから。今日はあたしの胸で泣きな」

アカリンがあたしを優しく抱き締めて、頭をナデナデしてくれた。

「今日は、ね」


< 99 / 230 >

この作品をシェア

pagetop