それぞれの崩壊
僕は、きっと「切られる痛み」はとても鋭い痛みなのだろうな、と想像していた。

何でも良い。もう、終わるんだ。



しかし、それはいつまで待ってもやって来なかった。

その代わりに、後から何やら騒がしい声が聞こえてきた。

「なんてこった!!これは酷い!」

「奥さん!あんた何てことを…」

既に何を言っているのか分からない、母の喚き散らす声が、一気に遠ざかり、僕はすぐに担架に乗せられた。

薄れゆく意識の中、けたたましいサイレンの音が聞こえていた。
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