それぞれの崩壊
しばらくして、彼女はふいに何かを思い付いたような顔になった。
　
「そういえば、心療内科には行った事があるの？何かを見て、それとシンクロしてしまうということは、あなたの心の問題でしょう？外科なんかより心療内科に行くのが一番だと思うのだけれど…」
　
僕の頭に衝撃が走った。
　
僕はなんて間抜けだったんだ。そうだ。心理療法があったんじゃないか。
　
いや、間抜けな訳では無い。まず僕はこの症状が治る事を考えていなかったのだ。小さい頃からの習慣のようになっていたから、僕には絶望の中で生きていく道しか見えていなかった。
　
でも、今は違う。何としてでも治したいと思っているのだ。治したいと思わせてくれる人が現れたのだ。
　
僕は彼女の顔を見た。その笑顔は、僕の希望そのものだった。
　
　
彼女は僕に一枚のメモ用紙を渡した。そこには彼女の知り合いの心療内科の名前と電話番号が書いてあった。
　
「そこの先生なら信頼できるわ。私の方からも連絡しておくから」
　
「本当にありがとう。きっと治してみせるよ。君の為にも…」
　
彼女はその言葉に少し顔を赤く染めると、無言で頷いた。
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表紙・目次

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