それでも、意地悪な君が好き。
好き
「香織?」
コーヒーの入ったマグカップを持ち階段を上がってきた晴人。
ハルの部屋の前に立つあたしを
不思議そうに見る。
「あっ、ハル
お帰り」
ゆっくりと息を吐き
何事もなかったかのように振る舞った。
「大丈夫?
具合いでも悪いの?」
様子のおかしいあたしを気遣う晴人。
こんな晴人の優しさに甘えてしまいたい。
でも…
それじゃあずっと何も変わらない。
弱い自分に負けてしまいそうになる
そんなあたしをいつも優しさで包み込んでくれる晴人。
この時ばかりは
そんな晴人の優しさが
辛くて
苦しくて
逃げ出したくなった。