それでも、意地悪な君が好き。






よし、言おう!

そう思った時だった。



「ふふっ緊張しちゃって可愛いなぁ~
香織、やっぱり晴人が好きなんでしょ?

ちなみにあたしは…ハルが好きなんだ」





えっ……………



嘘……でしょ……



今、なんて言った?




「おーい香織?
やっぱり当たってた?」


固まったままの思考。

そんなあたしの視界に往復する茜の手のひらが映る。




「あっ、ごめん…
ちょっとびっくりしちゃって」


びっくりなんてもんじゃない。

あたしにとっては衝撃的な事だった。


なんて言葉を発したら良いのか分からない。




「で、あたしの事はさておき…
香織はどうなの?進展は?」


完全にあたしの好きな人は晴人だと思い込んでいる茜。



でも…

思い返してみれば確かに茜の様子も何かおかしかった。

やたらあたしと晴人を二人きりにしようとしていた気がする。



謎が解けたと同時に

勘違いしているとはいえ、それは茜のあたしに対する優しさだったんだと気付いた。


はぁ~
どうしよう…

心の中でため息をつくあたし。



「晴人の事はもう過去の話しなの…」



「えっ!?
じゃああたしの勘違い?」


小さく頷くあたしに
そっかぁ…
と、分かりやすく落ち込んでいる茜。



「好きな人出来たら教えてね!
あたし応援するから」


偽りの無い笑顔で微笑む茜。

それもあたしを思う気持ちからだろう。



そんな優しい茜に本当の事なんて誰が言えるだろうか。


あたしは、やり場のない気持ちをただ抑える事しかできなかった。









< 179 / 246 >

この作品をシェア

pagetop