それでも、意地悪な君が好き。
よし、言おう!
そう思った時だった。
「ふふっ緊張しちゃって可愛いなぁ~
香織、やっぱり晴人が好きなんでしょ?
ちなみにあたしは…ハルが好きなんだ」
えっ……………
嘘……でしょ……
今、なんて言った?
「おーい香織?
やっぱり当たってた?」
固まったままの思考。
そんなあたしの視界に往復する茜の手のひらが映る。
「あっ、ごめん…
ちょっとびっくりしちゃって」
びっくりなんてもんじゃない。
あたしにとっては衝撃的な事だった。
なんて言葉を発したら良いのか分からない。
「で、あたしの事はさておき…
香織はどうなの?進展は?」
完全にあたしの好きな人は晴人だと思い込んでいる茜。
でも…
思い返してみれば確かに茜の様子も何かおかしかった。
やたらあたしと晴人を二人きりにしようとしていた気がする。
謎が解けたと同時に
勘違いしているとはいえ、それは茜のあたしに対する優しさだったんだと気付いた。
はぁ~
どうしよう…
心の中でため息をつくあたし。
「晴人の事はもう過去の話しなの…」
「えっ!?
じゃああたしの勘違い?」
小さく頷くあたしに
そっかぁ…
と、分かりやすく落ち込んでいる茜。
「好きな人出来たら教えてね!
あたし応援するから」
偽りの無い笑顔で微笑む茜。
それもあたしを思う気持ちからだろう。
そんな優しい茜に本当の事なんて誰が言えるだろうか。
あたしは、やり場のない気持ちをただ抑える事しかできなかった。