それでも、意地悪な君が好き。
「ヒクッ…ヒクッ」
溢れ出す涙。
拭っても拭っても止まらないそれは
現実を受け入れるしかないと言われているようだった。
静かな海岸は波の音に混じって
あたしのすすり泣く声が響いていた。
「…大丈夫?」
背後からの優しい声。
そしてその声の持ち主はあたしの横にそって腰掛けた。
………晴人
泣き顔を見せないようにうずくまるあたし。
こんな所で泣いているのを見られたら心配をかけてしまうに違いない。
「風邪ひくよ」
半袖半ズボンだったあたしは海風で体は冷えきっていた。
そんな体をふわっと温かい物が包む。
ハッと顔を上げると大きいパーカーが肩から掛けられていた。
泣いている事には触れない晴人。
「あ…ありがとう」
そんな晴人の優しさに余計に涙が溢れそうになった。
「ハルの事…
だよね…」
「えっ……」
驚くあたしを見透かしたように微笑む晴人。
だけど、その笑顔はどこか切なそうだった。