それでも、意地悪な君が好き。
「あれ?茜は?」
家を出てキョロキョロと辺りを見回しても茜の姿は見えない。
「あぁ…
なんかハルを起こして一緒に行くって…」
あたしに気を使ってか気まずそうに応える晴人。
えっ…
どうしよう…
ますます茜に伝えられなくなった状況に焦りが出てきた。
「そ、そっかぁ!」
かと言って落ち込んでいる様子を晴人に見せるわけにはいかない。
そう思って頑張って笑顔を作った。
「俺の前では無理しなくて良いよ…
っていうかもう慣れてるしね!」
まるでハルのように意地悪に笑う晴人。
それもあたしに対する優しさだと分かる。
「晴人…」
晴人の言葉に甘えるように
隠しきれない感情があたしを襲う。
茜の行動に募る不安…
気付いたら、ため息と同時に肩を落としていた。
「ハルは大丈夫だよ」
「……んっ?」
晴人の言葉に視線を上げた。
意味が分からないとばかりに晴人を見つめると、
あたしの頭をくしゃくしゃと撫でながらいつもの優しい笑顔で微笑む晴人。
そんな表情に何故か心は軽くなる。
そしてあたしは小さく笑い頷いた。