それでも、意地悪な君が好き。
「何?また変な想像してんの?」
「しっ、してないよ」
意地悪な笑顔のハルにバクバクと心臓の音が激しくなる。
思い出して顔が赤くならないようにテレビに視線を変えた。
こんなにドキドキするなんて意識しすぎなのかな…
「俺はキスしたいけど…」
「えっ!?」
紛らすように見ていたテレビからハルに視線を変えた。
真剣なハルの表情に吸い込まれそうになる。
「ま、また変な冗談を…」
「ふっ……
冗談ね…晴人に言われたかった?」
「なっ、そんな事…」
そんな事ない…
ただそれを伝えたいだけなのに…
寂しそうに笑うハルに動揺が隠せないあたし。
ねぇハル…
どうしてそんな悲しそうな顔をするの?
そんな顔をされたら期待しちゃうよ…
「ただいまー」
緊迫した空気を破るように玄関のほうから晴人の声がする。
「香織、来てたんだね」
「うん。お邪魔してる」
両手にスーパーの袋を提げた晴人は、あたしに優しく微笑むとキッチンへ向かった。
「今日の飯なにー?」
「しょうが焼きにしようと思って」
スーパーの袋から食材を取り出す晴人に声をかけたハル。
その様子は、さっきの事が嘘のように普段となんら変わりなかった。
あたしはというと…
いまだに動揺が隠せないでいた。
「じゃあ俺は部屋にいるわ。
飯出来たら呼んで」
ハルはチラッとあたしを見たが、すぐに視線をそらしリビングを出て行ってしまった。