それでも、意地悪な君が好き。
「あのね…あたし晴人に恋愛感情はないんだ」
「じゃあ…」
嬉しそうに微笑む江崎くんだが、あたしはすぐに首を横に振る。
「でも、江崎くんの事を好きなわけでもないの…
勘違いさせたなら…ごめんね」
丁寧に謝った。
これなら江崎くんも分かってくれる。
そう思ってたのに……
「照れなくてもいいんだよ?
俺の事、かっこ良いって言ってくれたよね?
ちゃんと菊地さんの願いだって叶えたんだよ」
そういう事か…
あたしの言葉が江崎くんにこんなに影響を与えるなんて思ってもみなかった。
変わった姿を見たいとか…
かっこ良いとか…
軽はずみで言った事がこんな事態になってしまったんだと反省した。
「ごめんなさい…」
ただ謝るしか出来なかった。
もうこれ以上の言葉なんて思い付かない。
「どうして謝るの?
俺がずっと前から好きだったの知ってたよね?
菊地さんも素直になりなよ…」
どうしよう逃げられない。
後退りするあたしに、少しずつ詰め寄ってくる江崎くん。
気付いたらロッカーに背中を合わせている状態だった。