それでも、意地悪な君が好き。
「ちょっとムードはないけど、初めてのキスはここで良いかな?」
恐怖でただ首を横に振る事しか出来ないあたし。
じりじりと近づく江崎くんの視線に唾を飲む。
両肩を抑えられ身動きが取れない。
吐息が聞こえるほど近くなる距離。
「てっきり篠田晴人くんの事もまだ好きなのかと思ってたよ。でも、安心した」
「うん。俺もそう思ってた!」
入り口のすぐ近くから聞こえる声。
ひょこっと笑顔で顔を出したのはハルだった。
「篠田…」
江崎くんの力が抜けた瞬間を狙って離れるあたし。
「江崎さぁ、いちいち長いんだよ…
好きならもっと方法あんだろうが」
するとハルはあたしの体をぐいっと抱き寄せ、唇が触れるスレスレまで顔を近づけた。
「止めろよ‼」
怒りまかせにあたし達を引き離す江崎くんにフッと笑うハル。
「お前…本当に襲われる才能あるんじゃね?」
後ろからあたしを抱き抱えたままのハル。
こんな状況なのに温もりを感じて変にドキドキしてしまう…
「まぁいいや…
江崎には悪いけど、俺達付き合ってるんだよね。
だからもうコイツに構わないでもらえるかな?」
えっ!?
思わず顔を上げると、
何も言うな。という感じで首を横に振るハル。