不器用ハートにドクターのメス
なので外装の把握が不十分だったのだが、今、昼前の光のなかで見てみると、改めて高級感のある車だということがわかる。
個性的なデザイン。全体的にスポーティーではあるが、ボディには丸みがあり、筋肉質な抑揚も持ち合わせている。
車に全く詳しくない真由美には、スポーティーさだのボディやフォルムがどうだのについては正直さっぱりわからなかったが、それでもかっこいい車だなぁ、先生に似合うなぁ、という印象だけは持った。
「お、おはようございます……」
遠慮がちに助手席のドアを開け、中にいる神崎に挨拶をする。
「……はよ」
帰って来た短い挨拶と、それに添えられた柔らかい表情に、真由美は大きく心臓を跳ね上げた。
へこへことお辞儀を繰り返しながら「おじゃまします」と助手席に乗り込む。
三度目だというのに、初めてのようにドキドキしていた。
「まず、飯でいいか」
良すぎるほど良い姿勢で助手席に収まった真由美に、神崎がたずねる。
「は、はい!」
「腹減ってるか」
「はい……っ!すいて、ます」
「朝飯食ったか」
「食べました……あの、ご飯とお味噌汁をーー」
「服」
一問一答形式で続いた会話にストッパーをかけるように、短い単語を、神崎が落とした。
真由美はきょとんとして、疑問の視線を隣の運転席に送る。
同時に、真由美から視線を外し、前に向き直る神崎。鼻梁のラインはとても美しく、そしてその美しい鼻の下にあるくちびるが、少し迷ったように開かれるのを、真由美は見た。
「……似合うな。そういうのも」
「っ、」