不器用ハートにドクターのメス
店にいる客は、全員女性だった。しかも選りすぐったかのように可愛らしい人ばかりで、自分がこの空間にものすごく合っていないことにも、気づかされる。
……いや、でも、わたしより……。
ちらりと、案内されたテーブルの向かいに座った神崎に、視線をやる。
……先生は、こういう場所が、もっと似合っていないような、気がする。
真由美が抱いた印象の通り、神崎はたしかに、テディベアだらけの空間のなかでひどく浮いていた。
まるで異世界に迷い込んだべつの生き物のようで、実際、周りのテーブルからも、視線が集中していた。
その視線は、なにも珍しいという好奇の類だけではなく、男前に向けられる、好意的なものでもあったのだが。
毎秒ごとに、居心地悪そうな表情を濃くしていく神崎。テーブルもイスも小さな作りになっているため、身体的にも窮屈そうだ。
その様子を見ながら、真由美は疑問を抱く。先生は、なぜ、わたしをここに連れてきてくれたんだろう……と。
もしかして、実は先生も、可愛いもの好きだったりするのだろうか。
さすがにこういう場所に男性一人では来られないから、わたしを誘ってくれたのかな。
周りからの視線がやまない中、店員がやって来て、神崎と真由美、それぞれにお冷とメニュー表が配られた。
期待に胸を膨らませながらメニュー表を開くと、その期待に見合ったものが、目に飛び込んでくる。
メニューは全て、写真付きだった。全てがどこかしらクマになっており、大変可愛らしい。
オムライスもクマ型、パスタもクマの形をしたものだ。全て目に焼き付けておきたいものばかりで、真由美はここでも、写真を撮りたい衝動に駆られる。