不器用ハートにドクターのメス
「……どれにする」
しばらくしてから、神崎が聞いてきた。
見とれてしまっていた真由美は、はっと我に返り、一番最初のページを開く。
「えっと、これを……」
決め切らないというのが正直なところだったが、真由美はとりあえず、一番大きく掲載されている写真を指さした。
パンケーキランチ。外の看板にも当店一押しと書かれていたくらいなので、選択して間違いはないはず。それが、スムーズな決定のポイントだった。
「……こんなもんで腹ふとるか?」
神崎は怪訝な顔をしたが、選ぶのが面倒だったのか、「まあいいや、俺もそれ」と、真由美と同じ物をチョイスした。
よく出る人気メニューゆえ前もって用意ができていたのか、注文の品は、ほどなくテーブルに運ばれてきた。
その皿を見て、真由美は思わず、くちびるを内側に巻き込んだ。
……か、かわいい。
クマ型パンケーキの実物は、写真よりもずっと、真由美をときめかせた。
食べてしまうのがかわいそうで、まだフォークも握れずにいると、目の前で、サクッと軽快な音がした。
視線をずらしてみてみると、神崎が、思いっきりぐさっと、クマの顔の真ん中にナイフで切り込んだところだった。
「……なんだ」
「あ……っ、いえ……」
正面で、ためらいなくクマを真っ二つにしてしまわれ、真由美は若干の衝撃を受けた。
少しばかり切ない気持ちになりつつも、ナイフの動向を見つめ続ける。