不器用ハートにドクターのメス
キスの相手が先生だったから……わたしは今、死にそうなくらい、ドキドキしてしまっているんだ。
気づいてしまう。わかってしまう。
自分の奥底に、いつの間にか芽生えていた、感情を。
キスに、べつに意味はない。そう思い込もうとしていた。でも、本当は。
先生がもし、ほんの少しでも、わずかでも気持ちがあってしてくれたものだったなら、いいのにってーー
「……っ、」
この瞬間、自分の欲張りな本心に気づき、真由美は両手のひらで、口元をおおった。
指先と、手のひらにかかる息が、小さく震えている。
「どうしよう……」
泣きそうな声で、呟いた言葉。
どうしよう。どうしよう。気づいてしまった。わたし。
……わたし、神崎先生のことが、好きだ。
先生を、好きになってしまったんだ。
自分自身でたどり着いてしまった真意に驚愕しながら、真由美はベッドの上で、ぎゅっと身を縮めた。
濃い一日の締めくくりに訪れた、初恋の自覚。
それは真由美には、うまく制御できるものではなく、とうてい処理できるものでもなかった。
寝転んだ体勢のまま、真由美は頭を抱え込む。
と同時に、ピロンッと音が鳴り、一通のメッセージが携帯に入った。
『真由美、元気か?』
携帯の画面に、メッセージが表示される。
携帯を手に取り、送られてきた人の名前を目にして、真由美は半泣きになりながら、ホッと息をつくことができた。
あたたかい気持ちが胸を満たす。
眉を下げ、画面に表示されている、続きを読む。
『会いたいんだけど、来週金曜の夜、あいてる?』