不器用ハートにドクターのメス
神崎は片眉をひそめ、香山に対しシッと追い払うように手を動かし、イスに深く腰掛け直す。
そしてMRI画像が表示されている画面に向かって、深い息を吐きかけた。
……どうしたんですか、と聞かれても。
神崎は、自分がおかしいことなど、言われずとも重々理解していた。
そして自分をおかしくしている原因が、手術部の10も年下の看護師、福原真由美であるということも……だ。
原因というか、影響されているのかもしれない。そんな苦々しい思いに駆られながら、神崎は、次の患者を迎え入れる。
「えっと、とくに異常とかはなくて……でもあの、もしかしたら、全然関係ないかもしれないんですけどー……」
調子はどうかという神崎の問いかけに、患者は、最近の体調について話し出す。
多少回りくどい言い方だったが、そこで話を切ったり自分の言葉を被せてしまうのではなく、神崎はこの時も、まず少し聞いてみるという姿勢をとった。
真由美と関わるようになってからというもの。
相手が話し出すのを待ったり、相手の言葉を辛抱強く聞いたりすることを、神崎はいつの間にか、体で覚えてしまっていた。
ただ話し下手なわけじゃなく、一つ一つの言葉選びを慎重に行っているーー神崎は、真由美に対して、そんな風に感じている。
自分のように簡単に棘のあるむき出しの言葉を吐くのではなく、よく考え、相手を気遣い、たくさんの工程を踏んで、やっと口に出す。
だから、出てきた言葉は、とても丁寧な響きを持っている。