不器用ハートにドクターのメス
くしゃりと、短い髪をかき上げる。
経験したことのない、激しい感情の起伏を、必死に堪える。
馬鹿だと笑い飛ばしたい。でも、そんな風に笑うことができない。
消してしまいたい。けれど、自分の中に誰かを慕う感情があったことがひどく愛おしく、手放したくない。
何もかもが、矛盾している。
再度車道の向こうに目をやった時、もうそこに、真由美の姿はなかった。
ベクトルの定まらない感情を持て余したまま、神崎は未練を断ち切るように、早足で駅へと歩き出した。