不器用ハートにドクターのメス
看護師は涙をこぼす
◇ ◇ ◇
さて、時間は少しだけ遡る。
神崎の “ 福原真由美目撃時刻 ” より、ほんの一時間前。
真由美は、星空の下ではなく、まだ建物の中にいた。
建物というのは、焼き鳥をメインとした大衆居酒屋だ。
店内にはタレの匂いと香ばしい炭の匂いが立ちこめていて、座席同士は、これでもかというほど詰めた造りになっている。
「最近、どうなんだ?仕事」
真由美の正面に座る男が、軽快な声で尋ねた。
男は、真由美の直毛とは真逆で、やわらかい質感の茶色い髪の持ち主だ。
頭のてっぺん部分の毛が、店内の冷房の風でふわりと揺れている。
「うん……やっぱりまだ、落ち込んじゃうことが多いかな……」
真由美はそう言って、目の前にあった焼き鳥を口に運ぶ。
タレではなく、塩味のものだ。ざらりとした粒の感触を舌で味わい、真由美は油味をおびたしょっぱさを噛みしめる。
「でも……少しは前向きになれてるかなって、思う。ちゃんと反省できるなら大丈夫だって、言ってくれる人も、いるし……」
「へえ、先輩かだれか?」
「あ、えっと……うん……」
少し言葉を濁して返事をすると、ちょうどテーブルに、新しい品が運ばれてきた。
皿に乗っている串は一本で、大きな丸いつくねが三つ、刺さったものだ。
どうやら、男が注文したものだったらしい。男はひょいと手を伸ばすと、その皿を、自分の方に近づけた。
さて、時間は少しだけ遡る。
神崎の “ 福原真由美目撃時刻 ” より、ほんの一時間前。
真由美は、星空の下ではなく、まだ建物の中にいた。
建物というのは、焼き鳥をメインとした大衆居酒屋だ。
店内にはタレの匂いと香ばしい炭の匂いが立ちこめていて、座席同士は、これでもかというほど詰めた造りになっている。
「最近、どうなんだ?仕事」
真由美の正面に座る男が、軽快な声で尋ねた。
男は、真由美の直毛とは真逆で、やわらかい質感の茶色い髪の持ち主だ。
頭のてっぺん部分の毛が、店内の冷房の風でふわりと揺れている。
「うん……やっぱりまだ、落ち込んじゃうことが多いかな……」
真由美はそう言って、目の前にあった焼き鳥を口に運ぶ。
タレではなく、塩味のものだ。ざらりとした粒の感触を舌で味わい、真由美は油味をおびたしょっぱさを噛みしめる。
「でも……少しは前向きになれてるかなって、思う。ちゃんと反省できるなら大丈夫だって、言ってくれる人も、いるし……」
「へえ、先輩かだれか?」
「あ、えっと……うん……」
少し言葉を濁して返事をすると、ちょうどテーブルに、新しい品が運ばれてきた。
皿に乗っている串は一本で、大きな丸いつくねが三つ、刺さったものだ。
どうやら、男が注文したものだったらしい。男はひょいと手を伸ばすと、その皿を、自分の方に近づけた。