不器用ハートにドクターのメス

『会いたいんだけど、来週金曜の夜、あいてる?』

先日のお誘いメールは、我が妹が元気にしているかを案じた、廉次からのものだった。

廉次を慕っている真由美はとても喜び、即座に会いたいと返信をし、そして今夜、二人は夕飯をともにすることになったのだ。


リーズナブルな居酒屋独特の賑やかな空気に身を置きながら、ネギマにつくね、ぼんじりと多種の肉を口にし、真由美たちの腹は、すっかり落ち着いてきていた。

空腹の時にはまず食べることが先決で、会話をしても食事の感想ばかりになりがちだ。

しかし、ある程度満たされてくると、別の話題が生まれてくるというものだ。


「お、もう酒なくなるじゃん。真由美、次なに飲む?」

「あ……あのね、お兄ちゃん」


廉次が席の端に立ててあるアルコールメニューを取ろうと動いたとき、真由美はこわばった声で、廉次を呼んだ。

廉次は手をとめ、「ん?」と首を傾げる。


「どうした?」

「あの……ちょっと……相談したいことが、あって」


相談。思い詰めた顔でそう切り出した真由美に、兄は目を見開いてみせた。

その目にはすぐに慈愛の色が滲み、「うんうん、言ってみろ」と、優しい声が真由美に向けられる。

これまで、見た目のせいで辛い思いをたくさん経験してきた真由美だが……グレたりひねくれたりしてしまわなかったのは、真由美が元来持つ性格だけではなく、家族の愛情のたまものでもあるのだろう。

素直で純粋な妹を、廉次はとても可愛がっていた。

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