不器用ハートにドクターのメス

こんな話題を口にすれば、兄を困らせてしまうだろうということを、真由美はなんとなくわかっていた。

けれど、兄に頼るしかなかったのだ。


神崎のことを好きだと自覚してからというもの。

真由美は毎日、それはもう、悩んで悩んで、悩みまくっていた。


キスの一件で、ただでさえ困惑しているというのに……自分の恋心に気づいてしまうとますますどう接していいかわからなくなり、最近はずっと、神崎のことを避けてしまっているのだ。

避けてしまうのは、ただ恥ずかしいからだけではない。

神崎の自分に対する行為を、親切心や同情からきているものと思い込んでいる真由美は、自分だけ勝手に恋心を抱いてしまったことに、罪悪感のようなものを覚えてしまっていた。

逃げるなんて、失礼だと思う。本当は会いたい。話したい。でも。

とても自分では解決できる問題ではない。が、恋愛相談を持ち掛けられるような友達は真由美にはおらず、親にももちろん、言えるはずがない。

でも、お兄ちゃんになら。

廉次から連絡が入った時、真由美はそう思った。

お兄ちゃんになら言えるし、きっとお兄ちゃんなら、聞いてくれる。

廉次は昔から、真由美の一番の相談役だった。

しかも廉次は、年上のお姉様方からウケがよく、恋愛面にもわりかし長けている方だ。

そのことを知っていた真由美は、廉次頼みで、なんとか今日の日を迎えたのであった。


「す……すごく、有能な人でね」


目線を横に逸らしたまま、真由美は続きを口にする。