不器用ハートにドクターのメス
……大丈夫。
真由美は自分に言い聞かせる。
好きって、自覚したばっかりだもの。まだなかったことにできる。大丈夫。
先生に好きになってもらおうだなんて、そんなとんでもないことを思っていたわけじゃないもの。
元々消そうと思っていた想いだもの。
だから、大丈夫。
けれど、その呪文は効かなかった。
真由美はこの時、自分が思ったよりも欲張りで、思っていたよりずっと、神崎を好きになってしまっていたことを知った。
「だいじょうぶ……っ、」
思うだけじゃ効かないから、声に出した。
その声は涙ににじんでいて、声に出してもやっぱり効果はなく、ちっとも大丈夫にはならなかった。
ぼたぼたと落ちる大粒の涙は、必死で声を抑える真由美の足場を、とめどなく濡らしていった。