不器用ハートにドクターのメス
……そうだな、怖い。
そして同時に、あいつに他の男が触れていると想像するだけで、胸がかきむしられるようだ。
奪ってやりたい、とも思う。
あいつの目に、自分しか映らないようにしてやりたい。
もっと知りたい。暴きたい。恥ずかしさに逸らされる視線を捕まえたい。
ちょうどすっぽりと包み込んでしまえそうな細い体を、がんじがらめにして閉じこめてしまいたい。
初めて知った自身の気弱さと同時に、暴力的な気持ちが込み上げるのを、神崎は感じる。
矛盾していて、混じっている。
でも一つだけ、あまりにも明確で、揺るぎない感情がある。
……俺は、福原真由美が好きだ。
言葉に出すわけじゃなく、心の中でそう思うだけでも、逃げ出したいような、何かを放り投げたいような、いたたまれない気持ちが込み上げてくる。
ずっと、恋に悩むなんて馬鹿らしいことだと思っていた。
公私混同して、恋愛がうまくいかないと仕事もうまくいかなくなる、そんな人間を軽蔑しさえしていた。
自分がまさか、その状況下に置かれるなんて、数ヶ月前の神崎は思ってもみなかった。
オトしたいと思うのは、いつだって自信に満ち溢れた高飛車な女だった。
だから強いて言えば、そういう女がタイプに当てはまるのだと思っていた。
なのにまさか、不器用で懸命で、初心な年下女が自分のドストライクだったとは。
そのことに、この年になって気づくとは。