不器用ハートにドクターのメス
止まりそうになっている……の、だけれど。
まわりには決してそんな風には見えておらず、むしろその逆。
執刀医にガン飛ばすとか肝座ってんなこの新人オペ看……と思われてしまうところが、真由美のかわいそうな宿命であったりするのだ。
福原真由美、23歳。
端的に言うと、真由美は女ながら、強烈にキツい顔面の持ち主である。
まず印象的なのは、目だ。
大きすぎる二重で、その上ぐぐっと急傾斜でつり上がっている形状をしているため、眼力が確実に、日本人平均の5倍はあると推測される。
その下に位置する鼻は、視界をさまたげるのではないかというほど鋭角に突き出ており、アゴも同様に鋭く尖っていることにくわえて、への字型の薄いくちびるは、不機嫌極まりない印象を相手に与えてしまう。
さらには、隙のない直毛の長い黒髪に、血の流れを感じさせない青白い肌。
鋭角な眉山。眉間にはシワ常備。
目鼻立ちがくっきりした美人、と称してしまうには、あまりにも全てが行き過ぎているのである。
そもそも……真由美が、執刀医に器械を渡すオペ看という職業についたのも、元をたどれば、この外見が大きく影響している。
真由美は、幼い頃から大変勘違いされやすい子どもだった。
常に苛々していると思われ、友達はできにくく、福原さんって怖いよねぇ、と遠巻きにされがちだった。
時には他校の不良に「お前なに睨みきかせてんだよ」と目をつけられたり、先生に「目つきが生意気だ」と説教を食らったりすることもあり、真由美の父親は、そんな娘の行く末を深く案じていた。