不器用ハートにドクターのメス

神崎と目が合うと、何もかも見透かされているような気分になってしまう、と真由美は思う。

今考えていることだけではない。

自分がオペ看という職業に対して志を持っているわけではなく、ただ消去法という形でこの職についたということまで見抜かれてしまうんじゃないか……そんな風に、思えてしまうのだ。

真由美が背を向けることにより、話したくないという態度を明確に示してしまったからか。それ以降、神崎は話しかけてこなかった。

再び、沈黙が落ちる。

静まったら静まったで、空気が重くなり、なんとも言えない気まずさが喉元に込み上げてくるというものだ。

真由美には、口ベタなくせに、こういう沈黙の場に出くわしたとき、なにか話題を切り出さねばならないのでは……と焦ってしまうきらいがある。

かなしいことに、あれでもないこれでもないと勝手に悩んでいるうちに、相手がどこかに行ってしまうというパターンが常であるし、切り出せたとしても、続かないというオチなのだが。

今回も必死で話題を考えたものの、相手が雲の上のお人ということもあり、真由美は全く、会話の糸口を見つけることができなかった。

ただただ、刊行日をチェックして戻すという単純作業を、真由美は繰り返した。

こういった単純作業であれば、真由美の得意分野だ。

かつて行ったバイトで、ベルトコンベアーで流れてくるケーキにイチゴを延々とのせ続けるという作業をしたことがあるが、たいして苦にならなかった覚えがある。

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