不器用ハートにドクターのメス

変更箇所は随時改訂しておかなければならず、オペに十分つけるようになってきたと判断された真由美に、その事務仕事が回って来たのであった。


「そんなもん任されるようになったのか」


頑張ってんな。やわらかさを帯びた声でそう言いながら、神崎はパソコンの画面をのぞき込む。

そして真由美に視線を移したかと思うと、指先を伸ばし、眉間を軽くつついてきた。


「でも、シワ寄ってんぞ」

「……っ、」

「福原」


意地悪く笑いながら指を離し、神崎は代わりに、自身の顔を寄せる。


「……明日。9時半ごろ、迎えに行く」


まるで内緒ごとのように耳元でささやかれ、真由美はぼうっと、顔を熱くした。



秋から冬へ。

二人が想いを伝えあってから、季節はひとつ、コマを進めていた。



あの日から、もう3か月近くの時が経つ。

互いに誤解を解いて付き合うことになったものの……最初のころはまだ、真由美は不安から抜けきれずにいた。

いつ「気の迷いだった」と神崎から切り出されるかと、気が気ではなかった。

先生のような人に自分なんかつり合わないという思いは消えることがなかったし、神崎が今まで付き合いを長く続けたことがないというのも、やはり心配な要素だった。

だが、危惧していた言葉は向けられず……それどころか神崎の態度は、付き合ってから今まで全くブレずに、一貫して優しいものだった。

3か月経った今ではさすがに、付き合っているという自覚も、芽生えてきている。

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