不器用ハートにドクターのメス
その態度を受けて、神崎は確信した。やはり、最初に受けた印象の通りだと。
他人と関わるのが嫌いで、しかもプライドが高い女なのだろう……と。
真由美の態度は、ドクターだからって舐められてたまるかという意思をそのまま表しているかのように、神崎には見えた。
自立心が過度であるか、もしくは偏屈で面倒な女なのかもしれない。
そんな風に考えがまとまったところで、とたんに、睡眠不足の疲労が押し寄せてきた。
その波に抗えず、神崎は、うっかりと眠りに落ちてしまった。
そこまではよかった。
問題は、その、眠りに落ちた後の事だ。
ふいに何かが近づいてくる気配を感じ、神崎ははっと目を覚ますと同時に、自分に向かって伸びてきたものをつかんだ。
それは、真由美の手だった。
まさかつかまれるとは思っていなかったのか、真由美はバランスを崩し、神崎の胸に飛び込んできた。
そして、直後。
『~や……っ、』
真由美に勢いよく突き飛ばされ、神崎はひどく驚いた。
突き飛ばされたことに、ではない。目にした、真由美の姿にだ。
その顔は真っ赤で、瞳はうるみ、くちびるは震えていた。
それはまるで、恥ずかしくてしかたがないという感情を明示するかのようで、ともすれば、男の支配欲をかきたてる扇情的な表情だった。
……あれは、見間違いだったのだろうか。
昨日からずっと、神崎は考えあぐねている。
すぐさま走り去ってしまったし、あの表情を見たのは一瞬だ。それに、部屋の中も暗かった。