不器用ハートにドクターのメス
「ご……ごめんなさい……」
ふるえた声が、神崎の鼓膜を揺らす。
なんで謝るのか、と口を開いたまま神崎が視線を送っていると、真由美はくちびるをわずかに開いて、言葉を継いだ。
「似合わないものを、持ってて……」
「え……いや……」
「その……に、似合わないのは、わかってるん、ですけど。でも、好きなキャラクターのものを持ってると、あの……げ、元気が出ると、言いますか……」
似合わないのはわかっているけれど、気分が上がるので持ってはいたい。
ただ、似合わないと思われるのが恥ずかしいから、カバーをかけていたということか……?
必死な様子で継ぎ足されていく言葉を解釈しながら、神崎は、一気に目が覚めるような感覚をおぼえていた。
……もしかして、自分は、とんでもない勘違いをしていたのかもしれない。
外見からすっかり、気が強い人間嫌いな女だと思っていたが、そうじゃない。
そうじゃないどころか、全く逆なのではないか。
本当は、気弱で照れ屋。
少し効率が悪いが、真面目すぎるくらい真面目で、周りを気にしてしまう女なのではないか。
一度見方を変えると、目の前の真由美に対して抱いていた謎が、次々と、芋づる式に解けていく。
今まで勝手に持っていた想像が、全て塗り替えられていく。
朝謝ってきたのは、べつに弱みを握られたくないから仕方なく、というものではなく、本当にただ申し訳ないと思っていたから。
ずっと無口だったのは、会話が面倒だと思っていたわけじゃなく、しゃべることが苦手だから。