不器用ハートにドクターのメス
そんな、ゲーム性のある感情と、今抱いている感情は、なぜか大きく違っているような気がする。
自分の感情なのに、うまく説明できない。
……これは、なんだ。
「……もう一本、吸っていいか」
落ち着いた声を装って、神崎は尋ねる。
隣からの問いかけに、真由美は小さく頷いて、はい、とか細い返事をした。
今はただ、オペ後だから、気分が高揚しているだけだ。
興奮状態が、抜けていないだけだ。
神崎は自分に言い聞かせながら、カチリとタバコに火をつける。
タバコの先端に、熱がともる。
二人がもう少し一緒にいる理由が、ここにできあがる。
煙を肺まで吸い込みながら、神崎は、なんとなく真由美の方を見ることができず、ひたすら前を向いていた。
神崎が細く煙を立ち昇らせる間、真由美はずっと、神崎のそばで、小さく身を縮めて丸まっていた。