不器用ハートにドクターのメス
ノートの新しいページに、今日怒られたことや気づいたことを思い返し、書き込んでいく。
しっかり頭に刻んだつもりでも忘れてしまうことがあるので、暇さえあれば、真由美はこの作業を行うようにしている。
重要だが、自分を再び落ち込ませにかかる作業だ。
……やっぱり、向いていないよなぁ。
ノートをまとめながら、ため息をついて、真由美は思う。
頑丈な精神力と機敏な判断力。
先読みの力。
オペ看はその全てを要求されるが、どれ一つとして、自分に備わっているとは思えない。
疲弊しきってマイナス思考に突入してしまったとき、真由美はつい、考えてしまう。
本当にやりたい仕事じゃないのに……と。
やりたいと希望していた仕事で困難な目にあうのならいい。けれど、違うのに。
本当は病棟に行きたかった。もっと言ってしまえば、看護師じゃなく保育士になりたかった。もっと人に好かれる外見に生まれたかった。どうしてわたしはお父さんに似ちゃったんだろう。お父さんが怖い顔だから悪いんだ。
そこまで思考がたどり着いて、真由美ははっと我に返り、ぶんぶんと首を横に振った。
お父さんはすごく優しいのに、わたしはなんてひどい娘なんだろう。
それに、外見だけじゃない。わたしの中身にも問題はあるのに。
やりたいとかやりたくないとかじゃなく、仕事なのに。いろいろあったにせよ、自分が選んだ道なのに。
ごめんねお父さん、と心内で謝り、仕事から逃げるようなことを考えてしまった自分を叱責していると、背後に人の立つ気配がした。